再度警告を


アーチェリートピックス (Part1: 2006.2月以前)の私のホームページの記事の中に掲載してあるのですが、ブレースハイト位置でのヨークのバランス調整を勘違いしている方が多いのに気がつきました。

下記の写真の左列は、Mach12(RH・1.5カム)ブレースハイト位置(メーカー出荷の状態のまま)でのホイールの傾き状態を、右列はフルドロー時点での状態をそれぞれ撮影したものです。

アッパー側 ブレースハイト位置

アッパー側 フルドロー時


左右を比較していただくとわかる通りに、ブレースハイト位置ではリムは片方に引っ張られてホイール・ホイール軸ごと傾いています。ところが、フルドロー時には、ホイールはほぼ垂直になっているのがわかると思います。

厳密に言うと、アッパー側はアイドラーなので完全に垂直にはなりません。これは、ワンカムだともっと顕著なのですが1.5カム(ハイブリットカム・HOYTならカム・アント・ハーフ)はワンカムの延長バリエーションなのでこれが限界です。
これがきちんとシンクロを取った2カムだと上下カムとも完全に垂直状態にできるのですが。

さて、ブレースハイトポジションでのホイールの傾きにこだわって、ヨーク部にツイストをかけホイール軸を水平にしてしまう方が多いのですが、この調整をすると、ドローイング時にホイール軸は大きく右に(右利きの場合)傾いてしまいます。 

これに伴いリムも大きくねじられるため、スプリットリムでは片一方のリムに過剰に負荷がかかるため、一方のリムの抜けや剥離が発生します。スプリットではない所謂一枚板の ソリッドリムでは、リムの端のカット部分のひび割れが発生します。 

もし、リムにこれらのトラブルが発生しない時には、ライザーが折損してしまいます。 
また、シュート時にはリムが大きくねじれて戻るため、ストリングとケーブルに横運動が発生する結果、サイトエクステンションやスコープの折損、水準器が横にとんでしまうなどの信じられないような現象が発生します。 

ヨーク部のツイストで軸の水平度調整をするのであれば、ピークドローからフルドローにかけてホイールが垂直に(軸が水平)になるように調整すべきです。 

ブレースハイトポジションでの水平アラインメントの調整はセットに致命傷を与えます。

ロアー側 ブレースハイト位置

ロアー側 フルドロー時


くどいようですが、メーカーは仕様としてブレースハイトではなくフルドロー時にカムが垂直になるようにセットして出荷してきます。これは、アセンブルミスでも、欠陥でもありません。

PSEのようなソリッドリムだとかなり目立つので、びっくりしてパニックになってしまうアーチャーが多いのですが、HOYTでも同様の状態で出荷されているはずです。
HOYTの場合、リムのクラックとハンドルの歪を嫌ってスプリットリムと、フリーになる2ピースヨークを採用しているので目立たないだけなのですが・・・・

去の記事と重複しますが、抜粋して掲載しておきます。これは、1999年代から2003年代にかけて掲載したものでなのですが、いまだに誤ったチューニング方法が神話に近い状態で流布されており、それを信じきっているアーチャーやショップが多いのでショックを受けました。


☆ヨークの問題 (1999年代の記事より)

かなり以前からこのサイトで問題を提起しているのですが、ヨーク部の調整の勘違いでリムやハンドルを破損してしまった実例が多く報告されています。 

ヨーク部の過剰調整をしてから3週間程度でリム(1枚リム)が上下とも縦方向のクラックが発生した例があります。クラックがリムの根元のテーパー部まで達していました。 
おそらくもう少しシュートしていれば、リムが剥離したか折損していたと思います。 
ケガをしなかっただけ運が良かったケースといえます。 

ヨーク部を過剰調整した結果、スプリットタイプカーボナイトリムの右上が剥離した例(短い期間に同じ地区で3件たてつづけに発生したようです)。 

ヨーク部を過剰調整しかつリムボルトを緩めていたために、スプリットリムの片側が抜けかかってしまった例。 

横振動が増加してしまった結果、スコープのレベル部分が横方向に飛び出してしまった例。 

おそらく、これが原因でハンドルが破損したり、リムにたてクラックが入ってしまった例などが情報として手元にきています。 
(同一人物が異なるメーカーのモデルで同様のトラブルを立て続けに発生させているところから、メーカーの設計ミスや商品の欠陥ではないと思います) 

くどいようですが、ヨークによってホイールのチルト(傾き)を補正するのであれば、フルドローイング状態で上下ホイールが垂直になるように慎重に調整するべきです。 
(このあたりの問題は、HOYTの社長のランディ・ウォークに技術的な確認をしてあります) 

下図はアーチャー側から見たホイールのチルトのプロセスです。 
簡単に描いてありますが、実際にはホイールの偏心の関係で現象はもっと露骨に表れるはずです。 



ファクトリーセットの場合、リムはピークウェイト時を中心に左右にほぼ均等に近い状態でねじられるのですが、ヨークの過剰セットの場合、リムは右側部分だけがかなりねじられます。 
これが、リムのたてクラックや、剥離の原因となるうえ、戻り方の関係で右から左へボクシングのフックのような衝撃を発生させます。 

尚、アップル社(コンピュータではなく、アーチェリーのメーカー)が、レーザービームを使った補正用ジグ(Laser Axel Alignment Tool)をAMOショーで発表していました。

さて、以上のチルトの原因はストリングとケーブルのセット位置のギャップとケーブルガイドの存在にあるのですが、これをきらってケーブルガイドレスのスプリットケーブルシステムに変更するアーチャーも多いようです。 

このシステムは理論上は素晴らしいシステムなのですが欠点もあります。 
アーチャーのリリース技術が未熟だとケーブルが暴れて振動が増加してしまいます。 

また、筈こぼれした時のアローの動作も予測がつかない怖さもあります。 
ケーブルガイドの存在は欠点もあるのですが、同時にケーブルの暴れを押え込むダンプ効果も併せ持つのです。 
単純にどちらがいいというものではありません。 

暴れが消えない結果、スタビライザーの根元が折損してしまったケースもあります。 

 

 

☆ホイールのチルトとヨークに関する記事
                        
(2003年代の記事より抜粋)

ところで、静的なチェックのポイントはもう1箇所あります。

ホイールのチルトの調整です。
 
過去にブレースハイト位置でヨークの片側をねじりホイールを垂直にするのが絶対と思い込んだアーチャーが多くいました。
この方法は、ドローイング時にリムのねじれを生じさせリムにダメージを与えてしまいますし、ライザーにもストレスを大きくかける結果、短時間でセットが破損してしまったケースが多くありました。
 
この方法の危険性についてはHOYTの社長、ランディ・ウォークとAMOショーの時に直接面談して確認してあります。
 
ホイールが垂直になるようにヨークを調整するのは、ブレースハイト位置は論外として、ピークウェイトのポジションがそれともフルドロー時にするかという問題があります。
これは、ホイールの設計値(FXドローカーブ)との関連があると思っていますが実証はできていません。
 
私が関連記事を書いた時点ではピークウェイト位置を基準としましたが現在の主流はフルドロー時のようです。

これは、多くのレーザーアラインメントツールが発売されそのいずれもがフルドロー時でのチューニング方法を解説しているからです。


 

HOYTの最初のヨークはハードでした。
その後、ソフトヨークに変わりそのときには2ピースになっていてヨーク接合部分を括っていませんでした。
これは、ヨークの本来的な使い方。つまり、「捩れや偏りに対して自然に無理のない補正を加える」機能が生きていました。

次の世代になって、ヨークとケーブルの接合部分が糸で括られてしまったので、左右のヨークは独立してツイストすることができるようになりチルトの調整が可能になりましたが、私が指摘したような勘違いが生じてトラブル発生の原因になってしまいました。

現在のHOYTのヨークは括りのない2ピースに戻ったようです。
その上ヨーク部分を長くしているところから、「捩れに対して自然に無理のない補正を加える」機能のためにヨークを使う方向に軌道修正したと考えています。

ヨークの使い方は

☆本来のヨークの使い方(セパレート型ヨーク)

     ・・・・・自動修正機能

          ・・・・・接合部をフリーにした2ピース構造

☆チューニング要素としての使い方(分岐型ヨーク)

     ・・・・・・左右のツイストを可変とすることでチルトの調整


          ・・・・・2ピースを糸で括るか、ケーブルを2股に分岐

の2種類と考えているのですが、いかがなものでしょうか?

HOYTは前者、私の使用しているAccuriserやPSEは後者のタイプのヨークです。



  > チルトを変えるとなると

  > カムの左右のスペーサーの厚さを変えてカムの位置をずらせる
  > という方法はどうでしょうか?

方法としては可能かと思います。
ホイールのサイズやタイプによってチルトの状態は変わるので苦労しそうですが・・・・
いつもちょうど良いスペーサーの発見に苦労しています。
多少の遊びもないと、ホイール軸が片べりしてしまうこともあるようです。

ほかの方法として左右のリムの厚さや幅を変えるという方法もあります。
私の記事のなかのTSSの部分がその一例ですがこれはもっと難しそうです。
HOYTがヨークのタイプを変えてきたということは、このあたりはいじって欲しくないということなのかも知れません。

2006.4.6