Tuning Manual RE V2.0

 

始めに・・・

このマニュアルはクッションプランジャーの使用を前提に作成してあります。
マニュアル利用に際し、特別な専門的知識は必要ありませんが次の要領だけは頭に入れておいて下さい。

矢が右に飛んだ時、プランジャーのスプリングを強くすれば矢は左に飛びます。

 

矢が左に飛んだ時、プランジャーのスプリングを弱くすれば矢は右に飛びます。

 

これは右利きアーチャーの場合です。
あなたが左利きの場合には左右を逆に考える必要があります。
つまり左利きのアーチャーの場合には下記のようになります。

 

矢が左に飛んだ時、プランジャーのスプリングを強くすれば矢は右に飛びます。
矢が右に飛んだ時、プランジャーのスプリングを弱くすれば矢は左に飛びます。
混乱を防ぐためこのマニュアル内では、表現を次のように統一しました。
 矢が右<左>に飛んだ時、プランジャーのスプリングを強くすれば矢は左<右>に飛びます。

< >の中に書かれているのが左利きのアーチャーのための表記です。ご注意下さい。

 

Preset(チューニングを始める前に)

 

まず最初に弓のセンターショットを確認してください。

ストリングを張ったらストリングが上下リムの中心を通っているかどうかを確認し、必要であれば修正してから次の作業を順番に行って下さい。
・サイトバーとストリングが平行になるように調整して下さい。
・リムセンターとストリングセンター、サイトピンが一直線上にならぶように調整して下さい。(以下センターショットといいます)

 

・つぎに矢の接触点がクッションプランジャーのチップの中心と一致するようにレストを調整して下さい。
もし、レストが磨耗しているようなら交換しプランジャー動きが滑らかであるかどうか確認し、必要ならオーバーホールして下さい。

 


・矢をストリングにつがえアローアラインメントをセットして下さい。
アローアラインメントの標準位置はセンターショットのラインとアローポイントの付け根の右<左>側が交差する位置です。
ただし、チューニング要素の組み合わせによってこの位置は左右に変化します。
例えば、矢のスパインが硬めの場合にはアラインメントはセンターショットに近づき、柔らかめの場合にはセンターショットより遠ざかるような傾向があります。
*アローアラインメントとはレスト上で矢が向いている方向をいいます。
*プランジャーのスプリングはアローアラインメントがセンターショットより遠ざかるほど弱く、逆にセンターショットに近づくほど強く調整が出来ます。
*アローアラインメントがセンターショットより弓側に向くことははあり得ないことではありませんがきわめて希なケースです。

 

・チューニングシャフトを準備して下さい。
フレッチシャフト(羽根付きの矢)を3〜4本、ベアシャフト(羽根なしの矢)を最低でも1本準備して下さい。
もし、可能であればフレッチシャフトとベアシャフトの重心バランスの位置を一致させておいて下さい。(より精度が高いチューニングが可能となります)

 

これで準備は終了しました。

 

次にあなたの弓のセッティングを決めて下さい。
チューニングに影響を与える要素は、下記の通りです。
 スタビライザーのスタイル
 ストリングのストランド数
 ストリングハイト
 使用するタブの種類
 上下リムのバランス(ティラー差)
これらの要素の組み合わせを決定してからチューニングに臨んで下さい。
<<重要>>
新しいストリング、新しいタブを使用する場合には必ず100射程度の慣らし運転を実施して下さい。


チューニングステップ

 

チューニングは下記の手順で実施して下さい。

 

・スタビライザーのチューニング
スタビライザーのコンビネーションは各自の好みで良いのですが、チューニングに大きな影響を与える要素のひとつですので、変更した場合には必ずチューニングをやり直して下さい。
コンビネーション毎の特徴は後述しますのでそれを参照して下さい。

 

・ストリングチューニング
ストリングの寿命は、使用条件によっても異なりますがが2000射から3000射が限界です。

寿命を超えたストリングはたとえ切れなくても、反発力が極端に低下しています。
このような状態でチューニングを行っても意味がありません。

また、新しいストリングの場合は、安定するまである程度の慣らし運転が必要です。最低でも100射は打ち込んでおいて下さい。

ストリングハイトはチューニングに最も影響を与える要素のひとつです。
また、ストリングのストランド数(ストリングを構成している原糸の本数)もチューニングに与える影響が大きい要素です。
チューニングはこのストリングハイトとストランド数のコンビネーションによって決定されます。
チューニングの要領としては、いろいろ試してみて弦音が静かで振動の消えも早いコンビネーションを選択すればOKです。
 
ここから先は10mの距離から実射してチューニングを行います。 

 

・ノッキングポイントチューニング
ここでは、矢のたて方向の不良運動(ポーパジング、イルカ泳ぎ)が解消出来るノッキングポイントを発見します。
まず、ノッキングポイントを仮付けして下さい。
位置はノックの下側で測って3/16インチ程度で良いでしょう。
次に、10mの距離でサイト付けをします。
サイト付けが終了したら数本のフレッチシャフトとベアシャフトをランダムにシュートします。


(A)

フレッチシャフトとベアシャフトが的の同じ位置(上下)にグループしたらこのステップを終了します。
ノッキングポイントを固定して下さい。

 

(B)

ベアシャフトがフレッチシャフトより上にヒットした場合には、ノッキングハイトが低すぎます。
ノッキングポイントを上げて(A)のグループになるまでこの作業を繰り返して下さい。

(C)

ベアシャフトがフレッチシャフトより下にヒットした場合には、ノッキングハイトが高すぎます。
ノッキングポイントを下げて(A)のグループになるまでこの作業を繰り返して下さい。

 

*このシュートは何回も繰り返してグループパターンを読みとって下さい。1,2回程度のシュートでは、射のばらつきと弓具のチューニングによる区別がつきにくいからです。

 

*ノッキングハイトは一般に下記のような傾向にあります。

上下ティラー差が大きい場合には、ノッキングハイトは高くなります。

グリップスタイルがローグリップになるほどノッキングハイトは高くなります。

リリースを薬指から先に離すタイプの場合はノッキングハイトは高くなります。

スタビライザーによる重心位置が低くなるほどノッキングハイトは高くなります。


・クッションプランジャーチューニング
ここでは、よこ方向の不良運動(フィッシュテイリング、サカナ泳ぎ)をクッションプランジャーを利用してコントロールします。
このステップに進む前にノッキングポイントチューニングを確実に行って下さい。
たて方向の不良運動が生じていると横方向のパラドックス現象にも大きな影響を与えるため正確なチューニングが出来ないからです。
 
前のステップと同様にフレッチシャフトとベアシャフトを10mの距離からシュートして下さい。

 

(A)

ベアシャフトとフレッチシャフトが同じ位置にグループしたらチューニングは終了です。

 

(B)

ベアシャフトがフレッチシャフトグループより右にヒットした場合にはクッションプランジャーのスプリングを強く<弱く>して下さい。
スパインは柔らかい<硬い>傾向にあります。

(C)

ベアシャフトがフレッチシャフトグループより左にヒットした場合にはクッションプラジャーのスプリングを弱く<強く>して下さい。
スパインは硬い<柔らかい>傾向にあります。

どのようにしてもグループしない場合には、スパインが許容範囲内にない場合があります。
このような時にはスパインの選択をし直すか、アローポイントの重量の増減、ストリングハイトやストランド数の増減等のテクニックでパラドックス現象をコントロールして再チューニングする必要があります。
詳細は後述の「チューニングに影響を与える要素について」を参照して下さい。

 

グルーピングチェック

 

ここでは、10mから50mを実射して各距離におけるグルーピングパターンを採取してチューニングの良し悪しをチェックします。

このチェックを実施する際にはセンターショットに一致させたサイトピンの左右は絶対に動かさないで下さい。

 

(A) 

各距離とも同一パターン(左右が変わらない)でグループすればOKです。

例え、それが的の中心より右寄り、左寄りのパターンであってもプランジャーの微調整によってセンター寄せが出来、かつ矢飛びも乱れずグループも甘くならなければチューニングは終了です。
仮に、プランジャーの微調整で矢飛びが乱れたりグループが甘くなるようであればプランジャーを元の強さに戻しサイトによって左右を変えても良いでしょう。

 

(B) 

短距離で右<左>、長距離で左<右>にグループする傾向がある時はプランジャーを若干弱くしてみて下さい。

(C)

短距離で左<右>、長距離で右<左>にグループする傾向がある時はプランジャーを若干強くしてみて下さい。

(D)

 その他のパターンになった時はアローアラインメントを見直して見て下さい。

 

*一般にスパインチャートより判断してスパインが柔らかい矢の場合はアローアラインメントは標準位置より外側に、スパインが硬い矢の場合にはセンターショットよりにチューニングポイントが見つかるはずです。

*アローアラインメントが外側にあるほどパラドックスは小さく生じ、センターショットに近づくほどパラドックス現象は大きくなる傾向にあります。
*通常スパインが適合範囲にある場合にはアローアラインメントはセンターショットより内側に入ることはないはずです。

 

*スパインが極端に硬い場合には矢はハンドルのフェース側に接触し、柔らかすぎる場合にはバック側に接触しやすくなります。

 

チューニングに影響を与える要素について

 

チューニングを実施してみてタイトなグループが実現出来ない場合には下記の要素を検討してみて下さい。
また、これらの要素のひとつでも変更した場合にはベアシャフトチューニングは必ず最初からやり直して下さい。

(センターショット)
リムがねじれている場合にはすぐにショップに持ち込んで再調整を依頼して下さい。

 

(レスト)
ハンドルライザーの形状、厚さ、各人のとりかけのバランス等によって適合するものとしないものがあるので注意して下さい。
例えば、人差し指でノックを押さえつけやすいタイプの場合、メタルレストを使用するとたて方向に不良運動を生じやすくなります。
(スタビライザー)
スタビライザーは矢のクリアに影響を与えるような不良運動と不良振動を吸収放散させ、かつエイミングを安定させる効果があるアクセサリーです。
スタビライザーのスタイルやウェイト重量を増減させると矢飛びに影響を与えグルーピングは上下左右に変化します。
・上下ダブルロッド
上下リムが同時に返るのが理想的なのですがバラツキが生じたときに不良振動が発生します。その不良振動を吸収・放散する効果が大きいセッティングです。
・センターロッド
どちらかというと、ショックアブソーバー効果よりもトルクに対しての効果を狙ったものでデフレックスタイプの弓(リムの動作点がピボットポイントよりフェース側にある)と組み合わされてきました。
前述の通りトルクに対して大きな効果もありますが、ウェイトを前方にセットして重心位置をより的側に移動出来るため故意にピッチングを生じさせ弓の飛びだしを強調出来るメリットがあります。

 

・Vバー
ローリングを防ぐ効果が大きく、特にエイミング時の安定性は大きくなります。
その他に、的側に移動しすぎた重心をフェース側に戻すカウンターバランス効果、アンチトルク効果も大きくなっています。
Vバーを下げ、アッパーロッドと組み合わせたパターンは特にローリングには効果がありますが、どちらかというと重心が低くなりエイミング時の安定性は増加するものの弓の飛び出しはあまり期待出来ません。
Vバーを水平にした場合には、重心点が上昇するためピッチングが生じやすくなります。
その点では、センターロッドと類似した効果がありますがVバーの付加された分ローリングには強くなります。
水平にしたVバーにアッパーロッドを付加した場合には重心点はさらに上昇しピッチング傾向はより強くなります。
また、Vバーを水平にしエクステンションロッド(Mロッド)を付加した場合にはピッチングはさらに強調され弓の飛び出しは大きくなります。
(ストリング)
同一条件のストリングを必ず2本準備しておいて下さい。
ストリングの寿命は2,000射から3,000射です。
これを超えると原形をとどめていても反発力は極端に低下していますので矢の失速や矢飛びが乱れる原因となります。
ストランド数はパラドックスに大きな影響をあたえます。
ストランド数を増加するとスパインはチューニング上硬くなり、減少させると柔らかくなります。
ストリングハイトを高くすると弓のポンド数が増加するのでスパインは柔らかくなり、反対に低くすると硬くなります。
また、ワックスの状態でもグルーピングパターンは変化します。
(ノッキングハイト)
必ずベアシャフトチューニングで適正な位置を確認して下さい。
ノッキングハイトの不適合はたて方向の不良運動のみではなく、よこ方向のパラドックス現象にも大きく影響を与えます。
ノッキングハイトが高すぎる場合には、矢はどの距離でも失速を起こしやすくなります。
一方、低すぎる場合には、短距離でのサイト位置は高くなりますが不良運動の影響で長距離では、失速状態を起こしやすくなります。
また、適正なノッキングハイトはスタビライザーのスタイルを変更したり、グリップを変えたりしただけで変化しますので留意して下さい。
とりかけも、ノッキングハイトに大きな影響を与えます。
例えば、ストリングを人差し指からはなすタイプの場合には上リムが先に戻りやすいためノッキングハイトは低くなりますし、反対に薬指から離れるタイプの場合には、下リムが先に戻るためノッキングハイトは高くなります。

 

(クッションプランジャー)
がたつきや引っかかりの生じたプランジャーはオーバーホールするか交換するようにして下さい。
また、雨天、強風時に使用した場合には、必ず動作をチェックして必要ならオーバーホールを行って下さい。

 

(スパイン)
個人差が大きな要素であるため各自で研究する必要があります。
スパインを選択する場合には、可能な限り実射して決定するのが好ましいのです。
メーカー側から発行されるスパイン表も毎年少しづつではありますが、変化しています。
たえず、最新のスパイン表を入手し研究してください。
(フレッチング)
  全く同一のピッチ、取り付け位置の物を使用して下さい。
ヴェインの形状や重量、ピッチの状態は大きなチューニング要素です。
(アローバランス)
特に、長距離での矢飛びに影響を与える要素です。
可能な限り実射によりテストして判断して下さい。
また、ベアシャフトチューニングを実施する際に、フレッチシャフトとベアシャフトのバランスをそろえておくとより精度の高いチューニングが可能になります。
例えば、長距離でのベアシャフトチューニングが可能になります。バランスが一致していない場合にはベアシャフトチューニングの実用的な距離は10m〜18mです。
(アローポイント)
アローポイントの重量は、パラドックスに非常に大きな影響を与えます。
ポイントの重量が重くなるとスパインは柔らかくなり、逆に軽くなるとスパインは硬くなる傾向があります。
ポイント重量の変化は前述のアローバランスに影響を与えるのは当然ですが、ノッキングハイトにも影響が及びますので注意して下さい。

 

(タブ)
タブの材質、厚さ、大きさ、形状はすべてチューニングに影響がある要素です。
例えば、タブの厚さが変わるとパラドックスの生じ方も変化します。

(ティラーハイト)
ティラーハイトは上下リムのバランスを知るための大切な要素です。
ティラーバランスはノッキングハイトの高さに大きな影響を与えます。
  一般に上下リムのティラー差が大きい場合(下リムが強い)には、ノッキングハイトは高くなる傾向があります。
また、ティラーバランスはグリップやスタビライザーとの相関関係でフルドロー時のエイミングのしやすさにも影響します。
ティラーバランスはリムを使用しているうちに変化してゆきます。
リムの構成素材が使用によりしだいに劣化してゆくためです。

 

(経年変化)
経年変化とは、物理的時間の経過によって生じる質的変化のことですが、これもチューニングに影響を与える要素のひとつです。
例えば、リムが新品のうちは、バランスを知るための目安であるティラーバランスはしばらくの間安定しません。
シュートしているうちに素材や接着剤が質的な変化を生じるからです。
ただし、この変化はある程度の期間がすぎると目立たなくなります。
各自のシュートの癖に馴染み、いわゆる慣らし運転が終了した状態になるのです。
この後しばらくは安定した時期が続きますが、やがて急激に変化を生じます。
つまり、寿命がきたのです。
リムの場合、練習量にもよりますが、賞味期間は約2年と考えるのが妥当です。
賞味期間をすぎたリムは骨董品価値は別として性能は保証されません。
また、素材の劣化は使用していなくても確実に進みます。
矢に使用されているアルミニウムは時過変化をおこしやすく使用していなくても固く、もろくなってゆきます。
また、ハンドルを構成しているマグネシュウムは緩やかにではありますが酸化腐食起こしてゆきますし、リムの張り合わせに使用している エポキシも徐々に風化し てゆきます。
(グリップ)
  グリップのスタイルは、ノッキングハイトに大きな影響を与えます。
一般的に、ローグリップの場合には下リムを強く押しやすいためノッキングハイトは高くなり、ハイグリップの場合には上リムを押しやすくなるためノッキングハイトは比較的低くなります。
ただし、かなり個人差が大きいためあくまで目安に留めて下さい。
 
  最後に・・・・
このマニュアルは1982年に作成したものをベースに見直し再編集したものです。
12年前と比較して、カーボンアローの登場やファーストフライトストリングの登場などアーチェリーをとりまく環境も大きく変化しています。
このマニュアルのベースになっているベアシャフトチューニングの方法は12年前と同様EASTON社のアローカタログに記述されているものを参考にしましたが、12年前に比較してEASTON社がカタログ上かなりのチューニングデータ、補正計算式なども公表しているので重複する部分は割愛しました。
詳細は最新のカタログを入手し、研究して下さい。
  しかし、カタログでは言及していない部分も多くあるため本マニュアルでは補足を加えてあります。

また、チューニングの方法としてコンパウンドボウで利用されているペーパーチューニングや米国の日系プロアーチャー、シグ・ホンダの提唱したウォークアウト方式等もありますが、ある程度のシュート技術や知識が必要なところから今回は記述しませんでした。

                   1994,K.Amamiya 

学生諸君に配布してあるマニュアルの一部を割愛して掲載してあります。

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