PSEハイブリッドカムのチューニングマニュアル V1.0


ハイブリッドカムシステムはワンカムボウの長いストリングを嫌い、ストリング兼ケーブルを上プーリーのところでセパレートにし、ストリング、コントロールケーブル、ヨークケーブルの3本で構成されます。

ハイブリットカムはワンカムのラウンドプーリーを偏芯プーリーに変えてストリングの返りにアクセントをつけていると思って差し支えません。
つまり、構成はワンカムと同様なのですが、アローの送り出し精度は2カムに近いと言えると思います。
ハイブリッドカムはワンカムと2カムの動作を複合させているので1.5カムと呼ばれることもあります

ハイブリットカムシステムは、ワンカムと同様メンテナンスフリーを目指しているためストリングやコントロールケーブルが伸びてもカムの角度はあまり大きく変わらないのですが、フルドロー時にヨークケーブルがほとんどのパワーを支えるため伸びやすく、ストリング+コントロールケーブルとテンションにずれが生じやすい欠点があります。

一般的にテンションのバランスは 

ヨークケーブル>コントロールケーブル>ストリング

となっています。それぞれ、長さの違い、素材の違い(メーカーにより異なる)、そしてかかるテンションの違いにより伸び率が異なってくる結果として、上と下のカムの角度が次第に変化してくる結果震動が発生し矢飛びに影響を与えます。

弓の性能を維持するため、メーカー設計値まで上下カムのバランス等を調整してやる必要があるのですが、以下にその方法を記載してみました。
ステップを初期・中期・末期の3段階に区分しました。

 

初期段階(200射前後~)でのカムと偏芯プーリーのシンクロチェック


シュートしていると、最初に大きく変化するのが最もテンションがかかっているヨークケーブルです。
これが伸びてくると、上カムの回転率が不足してくるため、アンカーリング直前のドローでストリングが上下に差動するため「ぎくしゃく感」が発生し、シュート時もノッキングポイントが上下動しながら戻るためアローの体制が大きく崩れる上、振動や発射音も大きくなってきます。
 

上下のカムのシンクロが合っていれば、ノッキングポイントは右図の上のような動きをするので、アローはまっすぐに押されます。

しかし、シンクロがずれるとカムの偏芯の影響でノッキングポイントは上か下のどちらかに引っ張られことになるため、下のような動きになりアローの体勢は大きく崩れることになります。

(動き方はどちらのカムの回転が速いかによります。右図はあくまで一つの例です)

 

余談ですが、リカーブボウでもティラーが適合範囲にないと同様の動きをしているはずです。

   

弓をフルドロー状態にして下カムのドローストッパーとヨークケーブルが接触する位置で固定します。

(固定方法と注意点はページ下方の付属資料をご参照ください。)

これが、上下カムのシンクロを判断するための標準位置です。
以下の説明は下カムがこの状態で固定されていることを前提に勧めてゆきます。


初期段階ではほとんどの場合、この状態(上カムの回転が不足している)になっているはずです。
これは、ヨークケーブルがテンションストレスによってメーカー出荷状態よりも伸びてしまったことを示しています。

この状態では、上下カムのシンクロが狂っているので振動も大きく、ノッキングポイントが上下動するうねった状態で戻ることとなります。

この場合には、ヨークケーブルを1~4回転程度巻き増ししてやるとシンクロを一致させることができます。回転しすぎた時には、ツイストを戻してください。

シンクロが一致している状態です。
上カム(偏芯プーリー)のコントロールケーブルガイドとコントロールケーブルが一直線上になります。

この状態がメーカー設計のシンクロの取れた状態で、振動は最少でアロースピードは最速になるはずです。


この段階では、ヨークケーブルのツイスト数の変更のみで調整をすることをお勧めします。
コントロールケーブルのツイスト状態を変えるとかなりややこしい状態になってしまいますので、よほどのベテランで動作を理解している方でない限りコントロールケーブルに触れることはお勧めしません。
 

中期段階でのシンクロチェック


シュートを繰り返しているうちに、最もテンションがかかっていたヨークケーブルが伸びきってしまいます。すると次にテンションがかかっているコントロールケーブルに負荷がかかるようになり、今度はコントロールケーブルが伸び始め、上カムが逆転しはじめます。

この段階に到達するのは、かなりシュートを繰り返してからだと思います。シューティング環境にもよりますがPSEのモデルで2,000-3,000射程度だと想定しています。

ヨークケーブルの伸びが止まり、コントロールケーブルが伸び始めるとこの状態(ヨークケーブルが伸びた時と逆転し上カムが過剰回転する)になってしまいます。

この状態でも、上下カムのシンクロが狂っているので振動も大きく、ノッキングポイントが上下動するうねった状態で戻ることとなります。

 
 

この場合には、左図の状態になるまでコントロールケーブルを巻き増ししてやる必要があります。

回転しすぎた時には、ツイストを戻してください。


この段階では、ヨークケーブルとコントロールケーブルの双方がのびてしまっているためブレースハイトがメーカー出荷状態より低くなっているケースがほとんどだと思います。

全体のブレースハイトがメーカーの初期設定より極端に下がり気味の場合(たぶんポンド数も減少しているはず)には、コントロールケーブルやストリングの巻き上げ調整も同時に必要になる場合もあります。
ただし、コントロールケーブルの巻き上げはミニマムにしないとヨークケーブルをかなり巻き上げなくてはならなくなります。

ポイントは、メーカー設計ブレースハイトを維持し、かつ上下カムのシンクロが一致するコンビネーションを発見することにあります。

末期段階(3,500~5,000射前後)


ストリング・ヨークケーブル・コントロールケーブルすべてが劣化し寿命がきてしまいます。
素材の弾力が失われアローの送り出し量も微妙に変化するため矢飛びがかなり悪くなっりピークウェイトも減少しているはずです。ストリング・ヨークケーブル・コントロールケーブルすべての交換が必要になります。

よく、ストリングやケーブル1本だけを交換する方がいらっしゃいますが、バランスが取れなくなるため3本とも同時交換することをお勧めします。

PSEの想定寿命は約5,000射ですが、これは連続してシュートを繰り返すFITAラウンドを想定したものではないのでFITA競技に使用されている場合には、3,500射前後での交換をお勧めします。


(注)

シンクロチェックは、最低でも500~1,000射毎にチェックされることをお勧めします。
ハイブリットカムは2本が同じ長さである2カムのケーブルと異なり、テンション負荷と長さが違うコントロールケーブルとヨークケーブルで構成されているため、素材の伸び率と負荷がそれぞれ異なるためシンクロが狂いやすいのです。

なぜこのような神経質な方式が採用されているのかという質問をしばしばいただきます。
私はメーカーの人間ではありませんので明確なお答えはできませんが、現在のCPに求められている環境が初速優先であり、最も需要が多い用途が3Dやハンティングである理由でこの構成が採用されていると考えています。

モータースポーツに例えれば、現在の主流のモデルは24時間耐久レース用ではなく、F1に近いコンセプトで製造されている段階だと考えています。
つまり、限られた短期間で性能が発揮できれば良しとしていると思われる節が多々見えるのです。おそらく、PSEの最新モデルX-Forceなどはその極致なのではと考えています。

さて、3本のストリング・ケーブールはカーレースでいうところのタイヤと同じぐらい重要な要素です。
まめな点検とメンテナンスをお勧めします。

付属資料~1
フルドロー状態の最も安全で確実な固定方法


フルドロー状態を安全・確実に維持するためには、専用のドローイングジグの使用が一番です。

 



 

しかし、適当な場所と機材が手元にない場合には、体操用の鉄棒や「ぶら下がり健康器」のようなものと芯入りロープ、ワイヤー、リングキャッチ、ターンバックル等を組み合わせて工夫することも可能です。

必ず周りの安全を確認し、使用するパーツの強度にも留意してください。
アローをつがえるようなことは厳禁です。


Hooter Shooter のようなシューティングマシーンもこの目的(シンクロチェック)には有効です。


付属資料~2
主なモデルとスペック
モデル名 CAM String Length Buss Length Control Cable Length  Brace
Height
ボウレングス ドロー範囲 ポンド数 レットオフ
(%)
AR-35 SD Ram & A Half CAM 1.5 55 37 3/4 38 6.1/2 34 23-27 40# 50# 60# 70# 75
AR- VELOCITY Ram Velocity CAM 1 97 1/4 36 - 6.1/2 34 26-30 +- 60# 70# 65 or 80
NOVA SU Synergy Universal CAM 2 56 1/4 37 - 7.3/4 35.1/2 26-31 +- 60# 70# 65
MOJO 3D NRG Hybrid CAM 1.5 60 40 42 5/8 7 38.3/8 26-30 +- 50# 60# 70# 65 or 80
MOJO 3D NRG Plus One CAM 1 102 1/2 40 1/2 - 6.13/16 38.1/2 26-31 +- 50# 60# 70# 65 or 80
MOJO 3D SH NRG Short Draw CAM 1.5 58 40 42 1/4 6.5/8 38 24-28 40# 50# 60# 75
X-Force Hybrid Fast CAM 1.5 60.7/8 34.1/8 36.7/8 6 33 27-31 +- 50# 60# 70# 80# 60 or 70
X-Force 7 Hybrid Fast CAM 1.5 ? ? ? 7 33 26-30 +- 50# 60# 70# 80# 60 or 70
MACH-X X1 CAM 1 96 1/4 34 3/4 - 7.1/4 33 27-31 +- 60#  70# 65 or 80
MACH-X NX NRG X CAM 1 97 34 3/4 - 7.1/4 33 26-31 +- 60#  70# 65 or 80
Genesis Pro Genesis Pro CAM 1 94.16/16 37.1/4 - 7.5/8 35.1/2 18.1/2-30 +- 15-25# 0